ブルータス、お前、モカ?

毎週楽しみにしていた ハーバード白熱教室 が終わってしまった。
http://www.nhk.or.jp/harvard/archive.html


ハーバード大学 白熱授業第1回 part1(犠牲となる命を選べるか)
http://www.youtube.com/watch?v=YGokgKoFjIg


NHKオンデマンドでは先週分までしか公開してないんだよね。使えな過ぎる。


「道徳的常識」であるとか「宗教」といったものが、良くも悪くも思考停止の強力な助けになるということを実感する番組だった。
善悪決めかねる微妙な問いに対し、何の不安もなく「そんなことは(道徳的・宗教的に)こうするのが当たり前だ」と答えられる心強さは凄まじい。
個人が不要な不安を抱くことなく暮らすため、もしくは、コミュニティがトラブルなく運営されるために生み出された、
(数千年分の知恵の集大成であろう)ツールとしてよく出来てる。
ただ、「常識」や宗教に違和感を持つ人間が一定数現れてくると政治哲学といった考え方がどうしても必要になるんだろうね。
少なくとも、「金持ちにより多く税金かける」理屈で、第8回の講義内容以上の説得力を持ったものを知らない。
http://www.nhk.or.jp/harvard/lecture/100523.html


実況はオタキングツイッター界隈が賢くて参考になるので、そのへんを見ていたのだが、
日本の、悪いことをすると「お天道様の下を歩けない」という考え方が、「砂漠の一神教」ほど人を締め付けるでもなく、
人と神(的なもの)の間に程よい距離感を持っているという点を語り合っていた。
モーセ十戒を見ると
・殺してはならない。
・姦淫してはならない。
・盗んではならない。
・隣人に関して偽証してはならない。
・隣人の妻を欲してはならない。
・隣人の財産を欲してはならない。
このへんはお天道様もお許しにならない共通点だが、お天道さんはたぶん同性愛を禁止してないし、世界も7日で作ってないし
豚食っちゃダメとかも言ってない。
ほぼ全ての人類が「善」と認識するであろう部分のみを素朴に信仰(?)しているおかげで、時代や生活環境が変わり
他の宗教で矛盾が発生しているのに対し、日本人は大きな意識改革を必要とせずノホホンと平和な国を維持しているんだね。
ただ、宗教の考え方が影響する国に生まれて、宗教の矛盾などで悩みぬいた末に自分の考えを持つに至った人間は
「いい奴」であるので、「いい奴」率はアメリカの方が高いとオタキングの人が言っていた。ノホホンも考えものだ。


カントが言ったという
懐疑主義は人間の理性の休息所である。しかし永久に留まる場所ではない」
のフレーズはヒネた中二臭い人に対して有効に使えそうだ。憶えておこう。




ところで、最終回の最後にサンデル先生が日本に来られるという告知をしていたのだが、
>「マイケル・サンデルです。日本の視聴者の皆さんからの好評にお答えして……」
の部分が、サンデル先生がカメラの方を向いて喋るでもなく、ただ吹き替え音声が流れるだけなので
ジョージアのラジオCM(10年くらい前?)にあった、吹き替えの人が「こんにちは、ブルース・ウィリスです」と言い切って
宣伝を始めるアレを思い出して笑ってしまった。極端なこと言うと、ウィリスやサンデル先生の許可なしで
いくらでも捏造吹き替えが作れるんだよね!